令和元年5月に成立したパワハラ防止法(労働施策総合推進法)に伴い、
パワハラに関する指針が官報に公布されています(令和2年1月)。
この指針の正式名称は、
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して
雇用管理上講ずべき措置等についての指針」といいます。
パワハラ防止のための措置は、大企業では令和2年6月1日から義務化されます。
(中小企業は2年後の4月から義務化されますので、早めに準備しましょう)
指針の内容には、パワハラに該当する例/該当しない例が出てきます。
この例は、職場での優越的な関係を背景として行われたものである前提です。
(以下、引用)
★職場におけるパワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例
身体的な攻撃
↓該当すると考えられる例
①殴打、足蹴りを行う
②相手に物を投げつける
↓該当しないと考えられる例
①誤ってぶつかる
精神的な攻撃
↓該当すると考えられる例
①人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む
②業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
③他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う
④相手の能力を否定し、
罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信
↓該当しないと考えられる例
①遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、
再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意
②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、
一定程度強く注意
人間関係からの切り離し
↓該当すると考えられる例
①自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、
別室に隔離したり、自宅研修させたりする
②一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる
↓該当しないと考えられる例
①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する
②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、
その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせる
過大な要求
↓該当すると考えられる例
①長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる
②新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、
達成できなかったことに対し厳しく叱責する
③労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる
↓該当しないと考えられる例
①労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せる
②業務の繁忙期に、業務上の必要性から、 当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せる
過小な要求
↓該当すると考えられる例
①管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる
②気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない
↓該当しないと考えられる例
①労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する
個の侵害
↓該当すると考えられる例
①労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする
②労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、
当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する
★プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を暴露することのないよう、
労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要
↓該当しないと考えられる例
①労働者への配慮を目的として、
労働者の家族の状況等についてヒアリングを行う
②労働者の了解を得て、当該労働者の機微な個人情報(左記)について、
必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促す
☆部下問題のある行動に対して、
一定程度厳しく注意すること等はパワハラには該当しないと明記されましたね。
これではパワハラを助長するのでは?、など、
批判する声もあるようですが、
社内の秩序を維持することも会社の責務ですから、
社員の問題行動に対して厳しい指導が必要な場合もあると思います。
大事なことは、部下を叱る時には指導育成するという目的から逸脱しないことです。
逸脱というのは、例えばいじめや嫌がらせが目的化するようなことです。
また、指導方法が適切な範囲であることにも留意する必要があります。
大勢の社員の前で叱責したり、やたらと長時間のお説教をする等は適切な範囲を超えると思います。
ただし、指針の例はあくまでも典型例で、
個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ることに留意しましょう。
ハラスメント発生時の具体策など、お困り事はお気軽にお尋ねください。
(ハラスメント対策協会事務局より一言)
・職場のハラスメント対策を推進する役割を担う人材として、
「ハラスメント対策アドバイザー」資格の認定講座を予定しています。
また、パワハラ防止措置に関する講義と、
ハラスメント対策アドバイザー資格講座のご案内を含めた事前セミナーを開催予定です。
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